午後の曳航

夜のタンゴが流行った1937年に日中戦争勃発。以降、カフェもダンスホールもチャブ屋も禁止。ジャズもタンゴも禁止…

しかし、迎えた敗戦で、アメリカに接収されたことで、横浜には、いち早くジャズが帰ってきます。

今は大御所と言われるジャズミュージシャン達は、若き日にこの街のバーや米軍キャンプで研鑽を積みました。

1950年代になると、朝鮮戦争が起こり、横浜は好景気を迎えます。港も一層賑わいを見せるようになりました。

60年代にかけて加速し、ベトナム戦争なども合わせて起こり、日本は高度経済成長を遂げる中、安保闘争や学生紛争の嵐が吹き荒れていきます。

そんな1963年、横浜山手を舞台に書かれた小説があります。

三島由紀夫
「午後の曳航」です。

主人公は13歳の頭脳明晰な少年。母親は、元町にある洋品店を経営する未亡人。五年前に夫を亡くし、ある夏の日、二等航海士と恋に落ちます。

少年は、自分の部屋の穴から鍵のかかった母の部屋を覗けることを発見し、二人の関係に気づいてしまいます。

彼はそれを嫌悪するのではなく、海の男を英雄視するようになります。

冬の日、再び航海に出た航海士が帰ってきて、母と結婚することになりました。

少年は、とたんにつまらない男に見えてしまいます。

一方、少年はとある不良グループの中にいました。
そのリーダーが、男を英雄のままにしておける、たった一つの方法があると言います。

2月になると14歳になるが、13歳のうちは裁かれない。

彼らは、男に航海の話を聞かせて欲しいと言って、港が見える丘にある彼らのアジトに連れて行きます。といっても、港が見える丘公園ではありません。
(今ですと杉田駅から分譲地を抜けて行く、富岡総合公園だそうです)

そこで、睡眠薬入りの紅茶を飲ませるところで物語は終わります。