霧笛

この小説は、少年犯罪を予見したとも言われていますが、私は別の切り口で今回読みました。
 
曳航とは何でしょう。
 
○引船が他の作業船などを引っ張って航行すること。
 
ダイビングですと
 
○溺れている、意識がないなどのトラブルに陥っているダイバーを、処置が施せる場所まで仰向けの状態で引っ張って水面を泳ぐレスキュー・スキルのひとつ。時には途中で人工呼吸をからめるなどの高度な技を要求される場合もある。
 
らしい…
 
 
実はこの航海士が、一生に一度、運命的に出会う女性がいて、それには死が伴うという理想を抱いているんです。
 
楽園がどこかにあると漂流し続ける身。陸に上がることは、そんなものは存在しないと認めてしまうこと。
 
しかし、恋した目の前の女性の美しさを自覚し、踏み切ろうとする。そこに少年たちがやってくる。
 
このあたりと、曳航という書名の名付け方が、やはりお見事だと思います。
 
さて、この海への憧憬や、待つものと出て行くものがいる港には、万国共通の思いがあると思います。
 
ポルトガルのファド「霧笛」
 
旅立つ男に焦がれ、毒を飲ませる女。
 
事実は小説より奇なりということもあるでしょうし、実際に待つ身の女性の辛さは、時代が厳しければ厳しいほど、辛い現実だったと思います。
 
しかしこの狂気は、ある意味小説や芸術の中では許される。
 
人々が浪漫を託したのかもしれない。そして、待つ女の歌でもあるけれども、男の側からも、ある意味、理想の歌なのだなと、今回三島由紀夫を読んで発見しました。
 
もちろん、みんながみんなそうじゃないと思いますが
 
「霧笛」