鷺沢萠さんのこと

 本のことを書いたら、何となく勢いがついてしまった…
 突然ですが、私は怖い話が嫌いだ。

小さい頃、にっぽん昔話や寺村輝男のおばけの絵本を読んで号泣した。おばけ屋敷はもちろんダメだし、ドリフで階段から白い手が一斉にわーっと出てくると、もうその夜トイレには絶対行けなかった(年代がばれますな…)ま、でも実は怖いけど楽しんでいました(笑)

そんなアタクシ、大きくなって、ある本に出会った。鷺澤萠の大統領のクリスマスツリー。念の為言うと、ホラーではない。

 それは、愛し合った男女が結婚し、すれ違って別れていく、それだけの物語。愛が消えるのはどうしようもない事。努力ではない。回りの友達は、だから?という反応だった。でも私には、どんな一級のホラーより恐ろしく、喪失感がはかり知れなかった。読んだ食堂の壁の色まで覚えている。私がピュアなんじゃなく、自分の中にそういうものを見たからだと思う。

鷺沢さんが好きでかなり読んでいた頃だった。人と人との境界線に凄く敏感で繊細。エッセイは豪快でコミカル。だが、どこかハッピーエンドじゃない。

きっと人を信じたいと思って試みるけど、薄っぺらな妥協ができない。でもまた始めからやる。彼女にとって、それが小説を書く事だったのだろう。しかしある日、自殺で亡くなった。悔しかった。

吉本ばななさんが好きなのは、最後、やっぱり大丈夫だよ、と心の底から言ってもらえる気がするからだ。書いてる事は同じくらい繊細と思う…ばななさんはある意味ドライなのかもしれない。けど私は鷺澤さんに、いつかハッピーエンドを書いて欲しかった。あそこまで人間を愛してたなら、深いハッピーエンドを書いてくれたはず。
独りよがりなんかじゃなかった…鷺澤さん…