乗り物

 ピアノの弾き語りに憧れたのは、矢野顕子さんを目の前で見てからだ。何も知らず青山のブルーノートに連れて行ってもらった事が一度だけあり、その日のライブが彼女とベースとドラムのトリオライブだった。

矢野さんは実際とても小さい。が、弾き始めると無限大なのだ。体の大きさはパフォーマ−には関係ない。どんだけ自由に空間と遊べるかなんだな、て彼女を見て改めて感じた。

山下洋輔さんも車の宣伝でやってたが、彼女のピアノは、アクセル全開でどこまでも行けちゃう車だ。

正直、矢野さんの声が最初苦手だったけど、ピアノ弾き語りアルバムを聞いて、あまりの上手さにやられた。鈴のようなピアノ。気持ちよさそうに弾き歌う。生を聞き、アドリブに圧倒され、彼女はジャズピアニストとしても超超一流な事を思い知らされた。

恐れ多くも、昨年クリスマス、レストランで弾き語りさせて頂いた。その時、思い知った。テンパった時、誰も助けてくれない(汗)カラオケやバンドの助けはなく、すべてが止まる。
(写真がそのピアノです)

今日久しぶりに、音楽の大先生、原田先生とお話しする機会があり、ちょっとお話しすると…
「弾き語りは、相当ピアノの鍛錬をしないと、難しいです」
「ジャズは、楽譜や誰かのコピーだけでは、ジャズじゃありません」
自分の音楽を育てなさい。その通りだ…

バイクに乗っけてもらった事があった。あの目線の高さは知らなかったし、あの風は知らなかった。自分の力で世界中どこにでも行けちゃう感覚。憧れた。が、この感覚、どこかで…そうだ、ピアノだ。上手、下手関係なく、この黒い乗り物で、思った以上に遠くまで連れてきてもらった気がする。凄く自由になれる。
ハードルは高いが、やってみよう。

でもやっぱり、一人では出来ない、色々な要素のあるミュージカルに出演して初めて、本番の気がする自分がいる。