亜季への道 9 コメディって?

歌、音楽のパワーというものは、私に活力をくれたと思う。

が、稽古の佳境に入ってきたころ、

ほとんどコメディ経験がない自分に、試練がやってきた。

茂樹に対する亜季の台詞の中に、ツッコミがあるのだ。
真面目なやりとりなんだけど、、

なぜ、的確に落ちないのか、笑いにつながらないのか、ということで、

稽古中、遠藤さんの指示のもと

コメディキングの小久保英明君とクイーンの信原久美子ちゃんを中心に、お手本をやって見せてくれた。

いろんなキャストさんが、やってくれた。

掛け合い。
絶妙に面白い。

なんで?

わたしには分からないのだ。

みんな、

ああ、綺麗だ。
素晴らしいとか言っている。

面白いのは分かるのに、なぜ面白いのか、よく分からない。

帰り道、2人が色々教えてくれた。

タイミングなのか?台詞の絶妙な落差なのか?

その人に合う言葉も違うと言って、2人で色々考えてくれ、これがいい、て言うのまで生み出してくれた。

私は必死で、その記憶を覚えたり、色々気をつけたりして、やってみた。

その日はウケた。

でも、次はうまくいかなかった。

茂樹のやなピーも、やんわり言ってくれる。

遠藤さんから、吉本新喜劇を見るように言われて、沢山動画も見た。

でもなんだかだんだん、ほんとわからなくなってきた。

ここが面白いんだろう、と思うと身構えてしまう。

会話してるのに、なんだか違うスイッチになる。

ただ、関西の方のツッコミというのは、人をけなしてるとか、無関心に突き放してるのではなく、

1つ踏み込んで、かかわっている、

言ってみれば、人間関係が厚い中に成立してる、てことは分かってきた。あたたかい。

でもまだ、わからん。

小屋入りの日は、作業が終わったら、役者は解散になった。

私は実は、しつこいのだけが取り柄くらい、しつこい。

だから、本当に悪いと思ったけども、その後に及んでコクちゃんに、

お願いします!教えて!

と言った。

コクちゃんは、1つ返事で付き合ってくれた。

その時、

亜季は、茂樹にどうして欲しくてここに来たんだ?という話になった。

抱きしめて欲しいとか、愛して欲しいじゃ弱いんじゃないのかな。
この人は、連れ戻しに来た、ていう強い意志のある人なんじゃないのかな?
て。

旭山も茂樹を本気で連れ戻しに来た。だから亜季と同じだ。でも本当の意味で連れて帰れるのは、亜季だけだ。

そこが弱いと、応援したくなくなる。そして、今こうやってるのも、実は全部役作りに繋がってるんだよ、て。

私は目が醒めたっていうか、なんていうか、全部繋がりました。

で、やってみた時に

これだ!!
てことになった。

笑いなんか気にするな。
そこの柱だけ大切にすればいい。

と、あのコメディキングが言ってくれたのだった涙

その柱がしっかりあるから、遊びが活きるし、私は難しい駆け引きは苦手だ。
柱を大切にしよう。

急いで、茂ちゃんを呼んで、やってみた。

シゲちゃんも、
うんうん!てなった。

で、遠藤さんに次の日見てもらった。

それで行きましょう。ということになった。

クイーンのクミちゃんは、そのシーンでは漫画を読んでてそこに座っている。

亜季は、艶子に気づかずに茂樹に話してるので、見ることはできない。

でも、毎回笑いが起きてましたよ、て言ってくれて、心強かった泣

どちらにしても、迷走してる私を、茂樹がちゃんと受けてくれていたから成立したと思う。

そこの台詞がきっかけで、実は他のシーンとか、すべての役の背骨に繋がっていった。

そんなコクちゃんは、ほぼ役者にお任せみたいな、面白いことやってシーンを、攻めの姿勢でガンガンやってくれた。


あんなに稽古始めには悩んでいたのに、鉄板で客席を、かっさらっていく。


でもその根っこにはこういう、愛情が溢れてる人なんです。だから、旭山コールが客席まで広がったんだと思います。